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☆島旅2000秋(第4話=波照間「私の故郷になってください」) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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何にもない島に行って、その領域を侵さない限り、自分自身でどう過ごそうと全くの 自由である。波照間には何も準備されていない。一応、「日本最南端」という冠がつ くので、そこに行ってみるというのも手だけれど、自転車で行っても、わりと起伏の ある道をゆくので気軽に寄れるという位置ではない。誰しも、子供の頃、何もない山 や原っぱに、こっそり基地をつくったり、自分だけの楽しみを見つけたことがあった のではないだろうか?波照間の魅力は、私の場合は、そんな童心に帰れることだっ た。思うまま過ごす、ビーチの側にある四阿にて午睡をしたり絵はがきを書いたり、 空想にふけったり...時間はゆっくりと流れるから、それもまたとりとめない。 空港には、今夜の宿<みのる荘>の方が迎えに来てくれていた。ワゴンの荷台を空け て待ってらした。え?ここに乗るの?と思っていたら、そこに乗せるのは私たちでは なく、私たちと一緒に空港に来た大量の物資であった。無事に宿に着いたけれど、今 度は宿で対応してくれる人がいない。しばらく待っていると、大慌てで女性が一人 やってきた。ヘルパーさんのようだ。大学ノートのようなアドレス帳に、住所などを 書く。部屋に通された。1号室だ。6畳の和室で、鍵は渡されなかったけれど、その 頃には島に慣れてきた私たちは、あまり気にならなかった。大きな荷物を置いて、自 転車を借りて島を回ることにした。島には観光施設はない。唯一在る観光スポットは 先に書いた<日本最南端の碑>と、南十字星が見える島ということで<星空観測タ ワー>があるで、その2つとも、集落からもっとも外れた位置にあり、わざわざ行く にはちょっとしんどいのだ。また島には名物料理を食べさせる施設もない。物産館も ない。リゾートホテルなんて絶対にない。団体さんもいなければ、温泉もない。でも 民宿のヘルパーさんは私たちのことを「お客様」という一般名詞では呼ばず「○○さ ん」とちゃんと名前で呼んでくれる。遠路はるばるやってくるだけあって、ここを訪 れる人は皆心得ている人ばかりで気持ちがいい。そして、何より海と空と風と星が絶 品である。まずは、ゆっくりと身体に自転車を馴らすために漕ぎ出した。とりあえず <モンパの木>という島唯一のお土産屋さんを目指した。お土産屋さんというのは ガイドブックに書いてあった表現で、実際は、趣味の小屋のようなところである。 Tシャツや、貝殻を使ったアクセサリー、絵はがきや島で作った民具のようなものが 置いてある。そこのTシャツを着て、八重山観光をすると「あなたも波照間に行きま したね」と、旅先での会話のとっかかりになるという。実際に私も体験したことだけ ど。ここで絵はがきを買って、ニシハマビーチに向かった。ニシハマビーチは今では 「西浜ビーチ」と書くこともあるけれど、西にあるからニシと呼ぶのではない。この 地方ではニシ=北である。西=イリと呼び、東=アリ、南=ペーと呼ぶ。 |
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ニシハマビーチはどう表現した らよいのだろう、どこにも属さ ない固有の匂いがする。それは 島全体に流れている空気でもあ るけれど、日本とも違うし、沖 縄とも違うし、近い台湾や大陸 でもないし、つまり「島」その ものなのだ。ニシハマは、いく つかのブルーで出来ている。グ ラデーションではなく、濃いブ ルー、エメラルドグリーン、グ リーン、淡いブルーが織りなす |
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□画像は四阿より望むニシハマ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
水のアートでもある。ニシハマビーチの四阿で絵はがきを書いた。最近、自分の字で 手紙なんか書いたことがなかったから、最初は難しかったけれど、書いているうちに 調子が出てきた。相方は歓喜の様子で海に潜ったままだ。私はのんびり持ってきた本 を読んだり、考え事をしたり、たまに海に入ったりして2〜3時間そこで過ごした。 お腹が減ったので、島唯一のレストラン<パナヌファ>に昼ご飯を食べに行った。 <パナヌファ>は無国籍な佇まいが島らしいレストランである。どういったらいいの か、大阪で言うとカンテみたいな店だ。ここができるまでは島では昼食を食べる施設 がなかったという。白い平屋の建物で、昼間は窓や扉をすべて開け放っていて、どこ か北アフリカの風情がある。私は日替わりのチキンのピーナッツ揚げ定食を、相方は 名物のカレーライスを頼んだ。カレーライスで、カレーのスパイスに凝っている店は どこでもあるけれど、<パナヌファ>はさらに、ライスにも赤米(西表島の古代米) を混ぜて炊いていて、一口もらったけど、とても南国の味がしておいしかった。 <パナヌファ>を出て集落の方に戻る。途中、ハイビスカスやブーゲンビリアがたく さん咲いている道をゆく。風力発電の大きな羽根がゆっくり風を受けて回っている。 長くいると忘れてしまうけれど、ここは風が強い。今日もまた快晴である。 さて、そろそろ日本最南端をめざして走りましょうか。(つづく) |
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次回・第5話=波照間「日本最南端の午睡」 |
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