<設計・監理をしてくれているアトリエ>

SUGA ATELIER HP
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1)ナゼ、建築家との家づくりを選んだのか。
一番最初に漠然と「住まい」を考えたのは建築家と家を建てることでした。もっと言うと、自分で設計したいくらい、空間に対して
の思い入れが強かったのです。それは人よりもセンスがすぐれているとかそういうことではありませんが、空間に対する感覚が人
よりは敏感です。ダメな空間があるんですね。閉鎖的で息苦しい空間。身体が拒絶反応を起こすような。高所恐怖症の人が、そうで
ない人にはわからないような身体の反応を起こしてしまうように。
だから、
自分にとって「落ち着ける空間」を探すことが、自分にはできるという自信がありました。
ただ、実際問題、一から家を立ち上げるのは大変です。私も一時期、設計の仕事をしていたことがあるので、今の私たち夫婦の繁忙
度から考えると、売建住宅やハウスメーカーのプラン選びですら、負担だった。なので、マンションを買おうかと思いました。
でもそれもダメに。私たちは共働きでとても戸建てを管理するような余裕はないからマンション向きだと思っていたのですが、
●共働きでも基本的にゴハンはちゃんと家で食べる、意外と家庭的な二人 ●忙しいからこそ、家でできる趣味で気分転換をしなけ
ればいけない ●余暇は家で過ごす時間を充実させたい
と考えて、
特に夫は趣味のクルマと音楽を最低限楽しめる、私は息苦しくない空間に帰ってこれる・・・という生活をしないと、
なんのために働いて生きているのかすら見失うと思った
のです。
戸建てでも比較的楽に手に入る建売住宅やハウスメーカーの家も検討しました。
まず建売はこれまで見た分については、今の借家よりも私たちの住みやすさではNGでした。部屋がいっぱいあるけど、どれも完全な
個室で、ライフスタイルと、私の空間に対する快適さにはほど遠い。ハウスメーカーは賛否両論ですが、やはり間取りの汎用性の面
とコストの面で無理でした。
最終的に残ったのが、建築家の世話になるという方法でした。日常生活だけでもいっぱいいっぱいなのに、とても一から家づくりを
立ち上げるなんて・・・。悩みました。ただ、
住まいに対するコンセプトだけははっきりとしていて、しかもガレージを家の中に
作ってしまおうなんて考え方だったので、他の方法では無理
です。それがわかっていたので、腹をくくりました。建築家と思い通り
の家を造る。私は決して、贅沢なことだとは思っていません。総額で言うと、同じ広さの土地込みの建売を買うよりは設計監理料も
含めてコストはおさえられました。本来なら、自分のほしい家を、好きなように建てられるべきなのです。でも、現状は、土地の
売買の形態、金融機関などの関連で、ハードルが高く必要のない苦労を強いられます。
だからといって、妥協した家に30年以上ローンを払い続けて文句を言いながら住むことは選べなかった。
未来の自分たちのために、今の自分たちが頑張らなきゃと思いました。
2)ナゼ、その建築家を選んだのか。
きっかけは、家づくりの本です。建築家の世話になると決めてから情報収集していて、たまたま本やインターネットで見かけた
建築家がいました。建築家選びはよく、相性だとか、作風が合うとかいいます。もちろんそれも大事だと思います。私たちの場合
は、それプラス次の二つを重視しました。

A)仕事の上での相性 B)建築家と施主のバランス

まずA)については、私たちが異常に忙しいため、メールでのコミュニケーションが中心になってきます。メールは今や当たり前の
ツールですが、会ったり、電話など、相手の気配が感じられない分、いらない誤解で関係が崩れたり、回り道している余裕がなかっ
たのと、
かなりのマメさがないと、とても私たち(とくに妻の方)にはついていけないと最初から分かっていました。メールでの
コミュニケーションは建築家の職能とは直接関係ないかもしれません。会ってコミュニケーションとれるならそれで十分なわけで。
これは私たちの一方的な都合です。仕事の上での相性というのは、人それぞれだと思いますが、
私は建築家が提案してくれるのを
待つという寛大な建て主ではないためで
す。ひとつのプロジェクトを一緒に進めるに当たっての同志だと思っています。たまたま
その中でお金が動くから一応、「クライアント」という風に言われるだけのことであって同志以外の何物でもないと思っています。
一緒に物づくりをするには、趣味が似ているとか、そういうのも大事かもしれませんが例えば気が合わなくても
「異質のもの同志が
一緒に活動すると想像以上のものが相乗効果で生み出される」
関係ってありますよね。それが大事かなと思いました。(といっても
決して、菅さんと私たちは仲が悪いわけではないです。詳細は3)で書きますが・・・)
B)については、コンセプトがはっきりしている我が家の場合はどうしても必要でした。実は、大先生も含めていろんな方が候補に
ありましたが、スタイルが確立されていて、ブランドになっている人ではいくら作風が好きでもダメだろう。逆に、100%希望を
聞いてくれるだけなら、基本のプランを自分で書いて工務店さんに渡し、構造計算して建ててもらえばいい・・・私たちに必要なの
は、私たちの住まいを考えるに当たって、一旦、自身をリセットしてくれて、尚かつこれまでの経験の引き出しを使った提案をして
くれる方です。つまり、
作品ではなく私たちのために、私たちと一緒に住まいを設計してくれる方です。
菅さんとは、実際にお会いするまでに幾度もメールでやりとりをしていました。この方に会ってみようと決めたのは、ゼネコン出身
で構造に明るいだろうという期待もですが、「ボクは住まいはご家族との、ゼロからの共作だと考えています」という一文でした。
3)その建築家とつき合ってみてどうだったか。
菅さんも、このサイトを見て応援してくれているので、書きにくいですねー(^^;
ただし、ここは本音で書いていこうと思います。まず、コミュニケーションの部分では満点です。よくぞここまで私の相手をして
くれるな、というほど愚痴の相手になってくれたり(家づくりとは関係ない)、レスポンスも早いため、もうメル友状態です。
またせっかちな私でもイライラしたことないくらい、
フットワークも軽く、説明も緻密でアグレッシブな部分と、繊細な部分を両方
持っている不思議な人
です。また期待していた以上に構造に明るく、クルマと同居したい我が家にはまさに適任だったと思います。
あと上では書かなかったのですが、ものすごく好感が持てたのが、ご家族とのつき合い方。お子さまが本当にまっすぐな子供らしい
子供で、奥様もかわいらしく、きっと幸せな家族と一緒に、普通の感覚で生活をされているんだな、と思いました(←普通の夫婦の
家を考えてもらうのだからコレは結構、重要です)。
あと、私が菅さんをすごく尊敬しているのは、99%私たちの希望をすんなりと聞いてくれるんです。た・だ・し、残りの1%で
見事に裏切ってくれます。で、
その1%があまりにもアクロバティックなウルトラCな提案で、最初は引くんですが、よく見ると
それがとても良いんですね。で、結局、その案を「いただき!」ってなってしまう
。この人「了解、了解」って言いながら、アタマ
ではずっと先のこと考えているんじゃないか、って思うときがあります。正にその辺を求めていたので、ありがたい。
あんまりほめると、嘘っぽいので、ちょっとこの辺でけなしておかないといけないのですが・・・
ちょっとすぐには思い出せないので、思い出したら書くことにしよう。
ああ、一個だけありました。こんなところで書くと怒られそうだけど、つまらないことですが、浴室と、2階のインナーテラスに
貼るタイルの大きさで意見が食い違って、菅さんは25角のモザイク、私は100角のタイルがいいと。他のことは最終的により
よい提案で私をねじふせてくれましたが、この件だけは、最後まで私は不満たらたら。でもこれについては、グッピーハウスの構造
が集成材でラーメンを組んで、柱むき出しになっているために、おさまりの関係でその方がよかったので今は納得していますが、
あのときに「この人強情だなー」と思ったことあります。グッピーハウスのために良かれと思ってしてくれたことで、夫などは
「25角でええやん」とあきれていましたが、本当に強情に見えたんです!・・・って自分が強情だって言ってるだけ?自滅。

※上の「1%・・・」のくだり、今ふと思い出したのですが、以前、何かで同じようなこと(商業建築家として99%はクライアン
トの意見を聞き、残りの1%にこだわる。が場合によってはその1%がすべてを支配することもある・・・というようなことだった
と思います)を私の好きな建築家である村野藤吾先生がおっしゃっていたような気がします。決してパクリではなく、素直な感想な
のでご了承ください。
4)プランの進行はスムーズだったか
何も問題なくスムーズに行きました。終。
と言いたいところですが、人並みに紆余曲折はありました。が、芯の部分は最初も、今も一緒で、途中経過でも一緒でした。
一番、時間がかかったのはなんだろう・・・
キッチンと、あと減額ですね。普通、予算の1割オーバーで話が進むなんてことはザラ
みたいですけど、私は結構しつこかったと思います。グロス表記ではなく明細を出してもらって、細かいところまでチェックして
仕様ダウンをしていき、
ほぼ当初の予算のMAXにおさめてもらいました。その間、菅さんや工務店さんなどにお手数をかけたと
思います。
キッチンは最初はメーカーでシステムキッチンを買うことを考えていて、ほとんどのメーカーのショールームをめぐって勉強しま
した。結局、夫と一緒にまわっているうちに、
見かけのキレイさとか70%の満足度のデザイン・使い勝手のために、予算オーバー
は出来ない
と思い、最終的には造作キッチンに。ここは自分にとって必要なもの欲しい収納の奥行きとかワガママがいっぱいあった
ので、基本的なプランは描いて詳細設計を菅さんにしてもらいました。どんなカタチで仕上がるのか、ものすごく楽しみです。
5)設計段階で、諦めたものは何か。
設計の始めの段階から、つねにどこかでローコストを意識した中で、思い切った提案をしてもらいました。菅さん&私たちCOTETU
夫婦の自慢は、
最終的に建物のシンボリックな部分、コンセプトの部分は一切、変更せずにすんだところです(コンセプトの部分は
詳細は下の6)に書きます)。
兼業主婦の私は、正直に言って、便利な設備だったりプラスα的な設備を希望しましたし、夫もガレージ扉の部分で妥協することに
なりました。が、
設備にお金をかけても10〜20年後には順番に寿命が来て入れ替えなければいけないので、結局マンションや
建売住宅を選定する基準と変わらないと理解しました。なので、諦めたのはほとんどが設備機器類です。表にまとめますのでコチラ
をご覧ください。
6)どの部分に一番こだわったか。
最初に、菅さんにお願いしたことは クルマと一緒に暮らせる 小さいながらもダイナミックな空間をつくってほしい 南北に長い土地なので、北側も明るくなるように工夫して欲しい 建具でしきった細かい部屋ではなく、家まるごとワンルームにしてどこでも音楽が聞こえ、クルマが見えるように・・・他は細かい要望がいっぱい。それぞれご提示いただいた解決方法として、
☆クルマと一緒に暮らせる←1階の一部にガレージを取り込んで室内との仕切をガラス貼りに。一部2階からも見えると思う。
☆小さいながらもダイナミックな空間←クルマを家に入れるためもあって、木造の在来工法では柱をとばせないため不可能。集成材をホームコネクターという金物でとめてラーメン構造を組んでもらうことになりました。まだ出来上がっていないのでわかりませんが、想像としては、大空間の両サイドをシンメトリーに柱が並んでいる、ものすごくパースのきいた空間になりそう。
☆北側も明るくなる工夫←これは2階のトップライトで解決。また1階の階高を抑えめにしてもらって、らせん階段でつなぐことに。らせん階段もこれまでにない、アイディアが詰まっていて、光を通しやすく開放感をもたせたらせん階段。どんな階段かは実物を見せるのが一番だと思うので、竣工した暁には、写真でお披露目することになると思います。
☆家まるごとワンルーム←これは先の3つの要望と表裏一体です。木造でラーメンを組んだことで住まいの中央に構造壁・柱を持ってくる必要がなくなったこと、見通しがよいことでクルマも最大限、望むことができ、音楽を遮るものもない。
他に、設計段階で出てきた問題として、
グッピーハウスの敷地の「場所性」があります。一応、住宅地なのですが、半分商業地域
でもあり、また高速道路への誘導道路が前に走っているので、不特定多数の往来がある一種の駅前的な場所でした。私は、縁側や
テラスなどの外とも内ともわりきれない空間が大好きなのですが、場所柄それは合わないと。そこで考えてもらったのは、
基本的に
内側だけど、窓を開けるとテラスにもなる「インナーテラス」。窓を閉めるとサンルームになります。
最初は洗濯物や布団を干す
のにバルコニーがないとイヤだと抵抗したのですが、それは私の思いこみでした。たまたま内側なのに、大窓があり、開放すること
でほぼ外の感覚になる空間を知っていたので、それを思い出して即、納得しました。

さて、この中で、イチバンこだわったのは。どれかひとつを選ぶのは難しいですが、敢えて1個選んで「グッピーハウス」のサブ
タイトルにするとしたら、
やっぱりクルマと暮らす家でしょうか。
7)設計段階で、改めて気づいた自身のこと。
これを書いているのが私=COTETU(グッピー)妻なので、私自身のことと、私から見た夫の話になります。
まず夫については、最初に予想していたとおりですが、思っていたよりも自分の意見を通す人だなと思いました。
夫の場合、意外と
男らしく、こだわるところと、どうでもいいところが実にハッキリしています
。例えば夫がこだわるところは、空間全体はもちろん
ですが、
住まいの性能や耐久性など「実力面」。通気のこと、日照のこと、メンテナンスのことには目がいくようです。特にキッチンを見ていたときなど、デザインはよくても造りの面で耐久性がないと思ったものについては、徹底的にレールやヒンジの部分を
指摘しながら「NG」を出し続けました。
一方私は、空間の中でのものの配置、バランス、デザイン、手入れが簡単であることに目がいきました。あと、
良くも悪くも思って
いたよりは少しスタミナがあり粘りもあるのかな
と。どうしても必要なことで、やらざるを得ないので・・・という部分が大きいの
ですが、もっと早くに投げ出したり、やる気をなくして投げやりになるだろうと覚悟していたので、ここまでこれたのは意外です。
また減額の時など、どんぶり勘定で気前のいい方だと思っていたのですが、すごく細かく見積のチェックをしたり、
意外としつこい
性格で小心者
だなと思いました。気づいたことではないのですが再確認したのは、やっぱりお金の計算は苦手で精神的負担が大きい
ことと、やっぱり
自分で納得いかないことは議論をしたり調べたりして追求するところ。で、そういう姿がイチバン自分らしいなと
いうところでしょうか。
いずれにしても、もう一回同じことを一からしろ、と言われると自信ないです。でも、家が建ってしまったらどうだろう。その後の
平和な日々に不満を感じて、また荒波に身を投じたくなるのでは・・とひそかに危惧しているところです。笑。