03:白い巨塔/山崎豊子
はじめて山崎豊子さんの作品を読んだのが「白い巨塔」だった。当時、中学生くらいだったと思う。
田宮二郎の同名のドラマを再放送で見て、なんて話だろうと興味をもち原作本を手に取った。ドラマも小説も記憶が薄れて
しまった2003年に、「白い巨塔」のドラマが新しく誕生した。それを機に、勤め先の社長からもらった「白い巨塔」を
再読し、その勢いで「華麗なる一族」「沈まぬ太陽」を読んだ。
ストーリーは読んでない人も、ドラマを見ていない人もなんとなく知っているくらい有名だけど、少しおさらいをすると、
「貧しく母思い、地方出身の向上心の強い医師・財前五郎が、金はあっても名誉がない開業医の入り婿になり、外科医として
の能力と舅の財力を武器に教授選に出馬。慢心から誠意のない医療を行い遺族より訴訟を起こされる、その頃、財前自身の
体にも病魔がしのびより・・・」と2行半くらいで書いてしまえるのだけど、そこに登場する人々が織りなすドラマはとても
人間くさく、金・名誉・色・・・欲という名の付くあらゆる欲がぶつかりあい、昼メロのような展開である。
私はまだ3作しか読んでないけれど、その中に置いて、いくつかのパターンをみつけた。
職業モノ たまたま読んだ3作は(私の好みってこともある)職業モノだった。いずれもステイタスがあり、
庶民に影響の大きい職業であった。
  
白い巨塔  :大学病院
  
華麗なる一族:都市銀行
  
沈まぬ太陽 :航空会社
悪人vs善人 悪人=性格には俗人。善人=性格には理想主義。いつもこの両者が対決している。さらに、物語上
の悪人が大多数で、その中で善人が苦戦するというしくみになっている。
  
白い巨塔  :悪人=財前五郎と大学病院の面々 vs 善人=里見医師+関口弁護士
  
華麗なる一族:悪人=万俵頭取+美馬など大蔵省 vs 善人=万俵鉄平+三雲頭取
  
沈まぬ太陽 :悪人=国民航空の大半      vs 善人=恩地元
大きな山が
2つ
物語には最低2つの大きな山がある。なので3〜5部構成になっていても飽きない。
  
白い巨塔  :1つめ→財前五郎の教授選  2つめ→医療裁判
  
華麗なる一族:1つめ→銀行の合併話    2つめ→鉄平の会社の事故
  
沈まぬ太陽 :1つめ→ジャンボ機墜落事故 2つめ→異業種よりの社長就任
さて、話を白い巨塔にもどすと、世間でこの話が再ブームになっていた2003〜2004年、私の周辺では「この話を
誰の視点で読んだか」という話題が出た。圧倒的に多かったのが、里見医師という意見で意外に思った。私自身はある人に
「あんたは財前五郎やろ」と言われたように、財前五郎の視点が近かったと思う。
財前五郎のやったことの是非はおいといて、人として見た場合、「なりふり構わず」「結局は、周りに利用されながら」
「自分が正しいと思った道を懸命に走った」にもかかわらず、結果的には報われない。これって、きっと誰でも心当たりが
あるのでは?読んでいる間は、財前五郎が乗り移っているようになり、最後は大いに泣きました。
白い巨塔(全5巻)
(新潮文庫)

著者:山崎豊子

ISBN:4101104336
サイズ:文庫 / 422p
発行年月: 2002年 11月
本体価格: 620円(税込)

以上、第1巻
ちなみに小麦的ベストof山崎豊子は・・・(04/10/10現在)
沈まぬ太陽(出版社:新潮社)
<以下、第1巻(アフリカ篇・上)>
ISBN:4101104263 サイズ:文庫 / 409p

「白い巨塔」が一番とも言えるけれど、この話は実話を
元に、当事者に取材を重ねて書かれた力作。
国民航空のエリートが、組合運動に巻き込まれ、自分が
正しいと信じた道を貫いたため、僻地をたらい回しにさ
れる。あまりの理想主義に、歯がゆさを感じながらも、
大きな組織の残酷さが描かれています。