02:今夜、すべてのバーで/中島らも
らもさん死す。
あまりにも作ったお話のようで、今にも不死鳥のようによみがえって、奇想天外なことを始めるのではないかと思わずにいら
れません。らもさんは、ファンというより目標でした。
破天荒な生き方・・・ですが、その小説は静かな祈りに似た慈愛があったと思います。それは、心が弱っている人間には通じ
る物だと思います。
数年前に、私はパニック障害という原因不明の心因性の病気になりました。日常生活が本当につらくて、電車に乗ること一つ
にも冷や汗をかきながら、なんども途中下車しながら会社にたどり着くという毎日。これ以上、会社に迷惑かけられないし、
私はもう社会復帰できないのだろうか・・・という状態で出会ったのが「今夜、すべてのバーで」です。
これはらもさんの半分フィクションの小説ですが、別に「頑張って生きよう」とか「生きていればいいことがあるさ」という
話ではないです。とあるアル中患者がどうにもならなくて入院した先での出来事を淡々となんの外連もなく書いてあります。
ですが、この一冊は、自分の身体すら信じられなくなっていた私のかたくなな心の隙間にスーッと(まさに、らもさんが表現
するお酒の清廉さのように)入ってきました。そして、この話を読み終えたときから、らもさんの本は私の薬になりました。
面白さで言ったら他にも、らもさんの作品にはいろいろあるのですが、私はこの本を一生忘れることができません。
今、自分がここにいる、救ってくれた一冊。らもさんが存在して、この本を書いてくれたことに本当に感謝しています。
いつか、私もらもさんのように、誰かのチカラになれるものを書きたい。

今週、私は「中島らも週間」と称して、らもさんが残してくれた珠玉の作品達を読み返していきます。
とりあえず、「ネリモノ広告大全」あたりを読みながら、笑って笑って、心からご冥福を祈りたいと思います。
いつまでも私の中での、目標である。そのことにかわりはありません。らもさん、ありがとう。
今夜、すべてのバーで
(講談社文庫)

著者:中島らも

ISBN:4061856278
サイズ:文庫 / 312p
発行年月: 2002年 09月
本体価格: 560円(税込)
ちなみに小麦的ベストof中島らもは・・・(04/07/28現在)
ガダラの豚(出版社:集英社)
<以下、第1巻>
ISBN:4087484807 サイズ:文庫 / 292p

奇蹟だとか呪術だとか、最初は読みづらいかと思っていましたが、なんのその。一大エンターテイメントの作品。たくみな伏線が敷かれていて、らもさんが推理作家になった!?3冊ありますが、確実に一気読みできます。ラストにうなり、読了時に歓声をあげてしまうことしかり。日本推理作家協会賞受賞作。